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慈善を娯楽化する事についての賛否

ホームレスのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

 

とりあえず、まずはこの動画を見て欲しい。

めんどくさかったら1本だけ良い。

 

 

www.youtube.com

 

 

 

 

慈善行為を動画サイトにアップし、収益を得て、またそれを動画資金に使うというインフルエンサーが増えている。

また、予め企画を説明してクラウドファンディングで資金を募り実行してアップロードする人も居る。

(恥ずかしい事にヤラセで炎上した馬鹿者が居る。日本にも。)

 

 

それぞれの動画の概要は下記の通り。

 

1本目:スーパーマーケットでの選択

「100ドル貰うか500ドルを知らない人にあげるかどちらが良いですか?」と聞いて回り、

500ドルを知らない人にあげると即答する男と出会う。

男は店の外にホームレスが居たと言い、その人に渡して大感激される。

その後も知らない人4名に100ドル渡した。

最後にインフルエンサーが「あんたは他人に500ドル渡す事を選んだ初めての人だ。

だからあんたに500ドルあげる。」と言う、男は手に受け取りつつも「俺も次に渡すよ」と言うところで動画は終わる。(I'll pass it onの解釈が間違っていたらごめんなさい、おそらくまた他の人に配るよというニュアンスだと思います。)

 

2本目:少年たちの実験

30代くらいのホームレスの近くにわざわざ1番年下の子を座らせ施しを募る少年たちの実験。

子供の方へは順調に募金が集まるが本物のホームレスは説教をくらったり警官に怒られたりと踏んだり蹴ったり、挙句の果てに食べ物を頭からまき散らされる。

そんなミジメな状態になった男は何故か立ち上がり、「俺の荷物を見といてくれ」と少年に告げて移動してしまう。

戻ってきた男はなけなしの金をはたき少年へ食べ物を渡そうとする。

驚いたインフルエンサーが声をかけ理由を尋ねると「こんな若い子に俺と同じ思いをさせたくなかった」と泣きながら語った。

感動し「実は少年は僕の弟なんです、あなたの為に募金しました。これはあなたのお金です。」と伝えそれとは別に200ドル渡す。男とインフルエンサーは抱き合うという内容。

 

3本目:振り向けば支援物資

通りで困っていそうな人やホームレスに、食べ物や果物をパンパンに入れた袋を本人に気が付かれないように渡すインフルエンサー

神に感謝している様子も見られれば感動して声も出せない様子の人達。

支援物資に気が付いて喜ぶ様子を遠くから観察するという内容。

 

 

これらを見て何を思い、何を感じるだろうか。

 

それぞれタイプの違う動画

やらせかどうかは置いといて全て本物のドキュメンタリーである前提。

 

1本目の主役はホームレスではない。

裕福そうには見えないが何処にでもいる普通のおじさん。

自分の金でないとは言え、私欲に走らず他人に施しをする姿や感激する人達に見ているこちらは胸を打たれる。

 

2本目はホームレスが主役。

自分も生きるのに必死な状態にも関わらず少年への気遣いを見せる。

少年は自分が座っている場所に後から来たし、少年の方が遥かにスムーズに施しを受けているにも関わらず少年に食べ物を買うホームレスの姿に見ているこちらは胸を打たれる。

 

3本目もホームレスが主役だが1人ではなくやりとりも存在しない。

五月雨にサイレント施しをして、歓喜する様子に見ているこちらは胸を打たれる。

 

 

最近だと有名なヒカキンさんがホームレスに炊き出しをする動画で話題になっていた。

あれも類としては一緒だろう。タイプとして1番近いのは3本目かもしれない。

 

 

また、TikTokだったので(そのままブログ内で再生出来ないので)載せなかったがもう1本ある。

 

場所はオーストラリア。1人の若者が通りで道行く人に手あたり次第「お腹が空いています。少しで良いので恵んでください。」と声をかけるが無視される。

しかしホームレスに声をかけると1人のホームレスが「食べ物は持っていないけど少しなら」といくらかコインを恵んでくれる。

若者はお礼と共にコインを返却し、これをどうぞと言って手紙をホームレス(トムさん)に渡す。手紙には感謝の言葉と「500豪ドル(約45,000円)が入っている。

トムさんは驚きつつ喜ぶが彼がその後とった行動に見ているこちらはもっと驚かされる。

なんと彼はそのお金で大量の食べ物を小分けにして買い、近くのホームレス仲間に施し始めた。足が悪いのか立つことすら出来ないホームレス仲間に対しハグと笑顔で対応する姿に見ているこちらは胸を打たれる。

 

そんな内容の動画だ。タイプとしては2本目に分類されるだろう。

こちらがそれだ。

those with the least, sometimes give the most.. 🥹💔 #kindness #love #... | TikTok

 

学者でも賛否別れる意見

 

素直に感動出来る人は拍手喝采と共にリツーイトしたりブログで紹介したりするし、

問題だと感じる人は「感動ポルノ」などの表現で警笛を鳴らす。

 

 

こうした慈善行為で収益を上げるインフルエンサー

収益を上げる事自体よりこうした行為自体に否定的な学者さんも居る。

 

特に2本目のホームレス自身が主役で、彼らの行動や言動、選択によって後のサプライズが受けられるかどうかが決まる動画だ。

2本目の動画はホームレス自身がとても心優しい人だった。しかし彼が少年に施しをしなかったらどうなっていただろう。自身が苦しいのだから少年に施しをしてあげられなくても何ら不自然ではない。むしろ当然だ。

 

Tiktokにしてもホームレスが「ごめん俺にも余裕がない」と断っていたらサプライズは無かったわけで、

否定側の要点をまとめると

「全ての人は施しを受ける権利が有る。善人かどうかで施しに差があってはならない。」

という事だった。

 

また、3本目の五月雨にサプライズしていく動画に対しても「本人たちの許可を取っているのか。」「貧乏人を金儲けに使うな。」「これが純粋な施しではなく金儲けの一部だと知ったら彼らは納得できるのか。」などの意見が見られた。

 

 

反対に肯定的な学者さんも居る。

 

・誰かを助けるといいことが有ると子供に伝えられる。

・人を助ける事は勇気の要る事だが受け手の喜んでいる人の姿を伝える事で促進に繋がる。

・結果的に社会全体に良い影響を与える。

 

というものだった。

 

 

コンテンツの難しさ

1本目はインフルエンサーがカメラを向けて話し合っているのでまだ良いが、

2本目と3本目はまず無許可で実験台にされている。

事前説明が有った上ではヤラセになってしまうからこうした動画は「とりあえず撮っちゃう」所から始まる。

(後々許可を取っているはいるものの。)

 

また、行為そのものは美しいが救済が必要な人を救うというコンテンツが流行し、

これらの行為が娯楽として成り立っているという指摘が有る。

当然動画ではカットされているだろうが、救済された側が「自分は見せ物にされた」「金持ちの道具にされた」と怒るシーンもあったであろうと予想される。

 

慈善行為の促進

 

結局のところ、これらの動画が良いか悪いかは

これらの動画が与える影響次第だと思う。

 

筆者個人は善だと思う。

少なくとも登場人物全員がハッピーになれている。

 

施しをしたくても勇気が出なかった人などは背中を押すきっかになる。

真似する人が出ればそれは素晴らしい事だ。

ホームレスの知り合いなんて居ないから無意識に「怖い」と思ってしまう。

だけど動画を見ればなんてことはない、僕らと全く同じ普通の人間だという事が分かる。

そうだと分かれば私もやってみようかなと思う人が出てくるかもしれない。

 

 

否定的な意見にも一定の理解が出来るけど「それでも良いんじゃないかな」と思う。

「お金は欲しいけど見せ物にはされたくない」という人は当然居るだろう。

でも多くの人はその日1日をどう暮らすかに必死な人の方が多いのではという予測からするとやはり良い事だと思う。

もし怒られてしまったらとにかく平謝りして主旨、目的を真摯に説明する。それで良いんじゃないかなと思う。

 

特に2本目の動画やTikTokなどは「自分には余裕なんて無いのに他人を救おうとする優しさ」にフォーカスされている。

通行人は無視するのにホームレスの人が救おうとするなんて、ずいぶんと考えさせられる映像だ。

 

 

教訓としても学べる

 

筆者の子供はまだ小さいので毎日絵本を読んでいる。

絵本には教訓がたくさんあり、その中でもトップクラスに多いものは

「正直者や良い事をした人は救われる」「他人を妬み嫌がらせすると嫌な事が起こる」の2つだ。

 

ディズニー映画などでもそうだ。

貧しくも心優しい人は後に幸せな事が起きる。

 

収益化する事はNPOだと考えれば納得のいく部分もある。

やらない善よりやる偽善。

行動する事は善かれ悪かれ影響を与える。

 

動画はヤラセかもしれない。ドラマの悪役のように「はいOK」の声がかかった途端、渡したはずの金を巻き上げているかもしれない。

だがそんな事を疑っても仕方が無い。

貧しい人へ募金を~と言いながら私腹を肥やしている連中だっているのだ。

 

うーーんと思う事は有る。

どうなんだろうなぁと思う事も有るけれど、それでも行為そのものは良い事だと思う。

窮地にあるにも関わらず恩恵を1人占めせず、他人まで救おうとする姿にはどうしたって胸を打たれる。

 

若者たちが始めたこの一連の慈善を娯楽化する動画活動は、一時のブームではなく長く続いて欲しいと思う。

 

自分も勇気を出して施してみようと思う。

 

おしまい。

 

 

余談

TikTokの動画には実は続きが有る。

インフルエンサー(サミュエルさん)は「実はこれは実験動画だった」と伝えトムさんに謝り掲載許可を取った。

快く応じ、またトムさんの行為が余りにも素晴らしかった事からサミュエルさんはトムさんの社会復帰を手助けしたいとクラウドファンディング基金を呼び掛ける。

 

100万円以上の金額が集まった事で反響を呼んだ。

一連の流れで「どうせフォロー稼ぎ」という批判も食らっているが、

サミュエルさんは「偽善だと思われても良い、この動画が何かのきっかけになれれば嬉しい」と語っている。