おもひでぽろぽろのおもひでぽろぽろ
だいぶ古い映画だが思いっきりネタバレ記事なのでまだ見てない人は読まないでください。
「おもひでぽろぽろ」を久しぶりに見た。
(本当は日本シリーズ、全国旅行支援割で泊まった旅行、もう一ヶ月近く経ってしまったキャンプの話を書きたいのだけど、それらを一本書くと結構な体力を使ってしまいそうなので後回しにする。)
おもひでぽろぽろは1991年の作品。
トトロ、千と千尋、ラピュタなど超有名作品を多数持つジブリ映画にあって
本作は比較的影が薄いかもしれない。
(今の小中学生は知っているのだろうか?)
監督・脚本は高畑勲さん。宮崎駿さんはプロデュースという立場だったようだ。
(画像はwikiから)
原作は岡本螢さん、作画は刀根夕子さん。
登場人物とあらすじ
主人公は東京で暮らす27歳の岡島タエ子。声優は今井美樹さん。
休暇を取って山形の田舎で農業経験する事を癒しとする変わったOLさん。(山形は姉の夫の親類というツテ)
滞在中、タエ子に色々と農業経験の世話をするトシオは25歳。声優はギバちゃん(柳葉敏郎さん)
タエ子が寝泊まりさせてもらっている「本家」の息子。
高校卒業したら東京に行く事を夢見ていたが親の反対で地元に就職。有機農業の先輩の影響で脱サラし、熱い気持ちで農業に打ち込んでいる。
(この作品は笑うと「ほうれい線」を出す事が印象的だ。)
全員紹介すると疲れるので登場人物はこれでおしまい。
他にトシオのおばあちゃん、同母、同父、ナオ子(タエ子の姉の夫の兄の娘で中学生)、くらいだ。
物語はタエ子がトシオやナオ子と会話する事で小学校5年生の記憶が蘇り、過去(昭和40年代)と現在(1982年)を行き来しながら進んでいく。
タエ子が小学5年生の昭和40年代というのはちびまる子ちゃんと同じくらいだろうか。
白黒テレビ、ひょっこりひょうたん島など、その時代を象徴するようなコンテンツ。
昔の東京の平凡な一家でどの家庭にもありそうなありふれた日常的シーンが度々呼び起こされる。
公式のURLを貼っておこう。
終盤、帰宅前日にトシオのばあちゃんが「そんなにここを気に入ってくれたならこのままトシオの嫁になってくれねえか」とタエ子に提案。
衝撃を受けたタエ子は本家から走って出て行く。
1人で佇んでいるところに通りかかったトシオが車で拾い、塞ぎこんでいるタエ子に「本家で何かあったんですか。」と声をかける。
その問いには答えず5年生の思い出で、自分にだけ握手をしてくれなかった「あべくん」の話を始めるタエ子。
タエ子本人のセリフを一部引用して心情を予想するに、
田舎暮らしに憧れを抱く東京生まれのOLが田舎の良い面だけを見て、「良い所ですね」「ここは天国」などのセリフを連発。
いっぱしに農家を知ったつもりだったが「嫁に来ないか」という抜き差しならぬ一言に「自分の人生にも田舎で暮らす可能性が有り得る」という事を自覚。
一生暮らす覚悟も無しに「こんな所で暮らしてみたい」というセリフを繰り返し、いざ相手がその気になったら怖気づいてしまう自分自身に嫌気がさしてしまう。
タエ子の心情を知ってか知らずかトシオは黙ってそれを受け止め車を走らせる、唐突に始めた5年生の辛い思い出もトシオの解釈を持って良い思い出として変換させようとしてくれる。
そんなトシオにタエ子は・・・
(これ以上書くのは野暮。)
という内容。
本作の魅力
まず第一に言いたい事は
とにかくトシオが格好良すぎる
という事。
なんて格好いいんだトシオ。
普段おしゃべりな癖に大事な時は多くを語らず包み込む、彼の人としての素晴らしさが溢れている。にじみ出ている。
もちろんおめかしして蔵王にデートへ誘ったりしているので少なからずタエ子に好意的だったんだろう。
だが指一本触らないし(触ろうとしてやめる仕草はあったが)、後半のシーンでも唐突に抱きしめるような事はしない。
数日間だけの短い付き合い、タエ子は東京の人という前提が有るので一歩踏み出すような事は一切しなかった。
30年も前の映画なのに何故こんなに美しいんだろう。
この画像だけでも目を細めて「ふーむ」と鼻息をしてしまわないだろうか。
トシオいわく流れる曲はハンガリーの百姓の音楽らしい。
聞き慣れないがどこか親しみの有る音楽と農作業風景が織りなすハーモニーは見ているこちらに何とも言えない心地よさを感じさせてくれる。
感想
本作を一本きちんと見たのはおそらく20年ぶりくらいだ。
初めて見た時は家で母と姉と見ていた。
公開された1991年から数年経った金曜ロードショーか何かで見たのだろう。
母はトシオのばあちゃんが自分の事を「オレ」と呼ぶ事や昭和40年代の風景、ひょっこりひょうたん島などの歌に懐かしい懐かしい喜んでいた。
タエ子の父親はかなり厳格で無口、筆者の父親はひょうきんな人で親しみやすいタイプなので「こんなお父さんじゃなくて良かったなぁ」と思っていた。
それこそ小学5年生くらいで見ていた筆者。
現在のタエ子より小学校時代のタエ子の方が遥かに感情移入しやすい対象であり、
タエ子とトシオの難しい大人のやりとりや、ばあちゃんに嫁に来ないかと言われて衝撃を受けているタエ子の気持ちなど全く分からなかった。
(ついでに言うとタエ子の同級生が生理になるというシーンが有るのだが、それを姉や母に質問してはぐらかされた記憶が有る、懐かしい)
筆者もタエ子と同じく東京生まれ東京育ち。
田舎暮らしや方言に憧れを頂く気持ちはよく分かった。
ポツンと一軒家などで良い面だけを見て「良いなあ田舎は」と呟く筆者はタエ子と全く同じだろう。
今、41歳でこの映画を見て何度か涙ぐんでしまった。
どういう涙だったのかは説明できない。
だが何か温かい気持ちで泣いていたと思う。
27歳のタエ子も25歳のトシオも、41歳の筆者からすればぴちぴちの若者だ。
41歳で見てようやくこの作品を深く理解する事が出来た。
そしておもひでぽろぽろを見て、自分自身のおもひでもぽろぽろ出てきた。
ジブリパークも出来た事だし、昔のジブリ作品を子供と一緒に見てみようかなと思う今日この頃だった。
おしまい。