40歳を超えて立場も変わり、新しい事に挑戦する機会が増えた。
筆者は2月から和船の操船団体(NPO)に入会させて頂いている。
昨日は出港準備と車庫入れ(船庫入れ?)を教わった。
だた、その説明をしてくれた人の説明の仕方が恐ろしく下手で、筆者を含めた新人さん達は思わず顔を見合わせ唖然としてしまったのでこれを書く事にした。
別にその人を悪く言いたい訳ではない。
説明をするという難しい行為において注意点を抑えた方がみんながハッピーになれると思って書いた。
せっかく時間を割いて一生懸命教えてくれるのに、聞き役が「全然分からなかった」と感じてしまうのは非常にもったいない。
説明に自信が無いと苦手意識を持っている人にも、何かの役に立てたらと思います。
ちなみに日本にはまだまだ馴染みの無い言葉だが、
コーチのコーチである「コーチングディレクター」という職業が存在する。
コーチングディレクターはコーチする全般の人にコーチするので管理職研修の先生に役割は似ている。主にスポーツ界のコーチに対し「どのようにコーチすれば組織力が高まるか」という事に特化している専門家だ。(代表だと中竹竜二さんが有名だ。)
こういった方の指導を受ける人が増えれば増えるほど人と人とのコミュニケーションは円滑になると思う。
では本題。
教えるのって難しい。
人に何かを教えるのは難しい。
こう教えたら良いかなと思いあれこれ考えながら教えると受け手を混乱させてしまう。
だから出来るだけシンプルに。
とりあえずゴールを見せる事から始める。
何事もまずは「こうなったら成功」と言うイメージをしっかりと分かってもらう事が大事だ。ここを目指すのだと理解してもらう。
順序は下記の通りだ。
- 成功イメージの共有
- 流れの説明
- 詳細手順
- 注意事項
- コツの共有
筆者は人に説明する時必ずこの手順を踏む。
大体のビジネス書や啓発本もこの順番が多い、王道だ。
自分の説明を受けた人が失敗した時、真っ先に考えるべくはその人が何を失敗したかではなく
成功イメージと流れの共有がちゃんと出来ていたかを考えるべきだ。
注意事項に反していたかのチェックは後で良い。
教えた通りにやれてない!と不満を持つ前に自分の説明を振り返る必要が有る。
例えば料理初心者にカレーを教えるとする。
1,成功イメージの共有
まず最初にすべきはどんなカレーを作るのかを共有する事だ。
説明する側が自分自身に設定するゴールと聞き役のゴールイメージは一致させなければいけない。
カレーを習いたいから教えて欲しいと依頼された場合、
説明が下手な人は「じゃあ準備しておいて」とだけ伝える。
これでは聞き役はどんな材料を用意すれば良いか分からない。
筆者の常識ではカレーと言えばゴロっと野菜とお肉入りのカレーだが、お互いの常識が一致しているとは限らない。
聞き役が習いたいのは本格インドカレーなのか、家庭的なカレーなのか。
その場合お肉は牛なのか豚なのか鶏なのか、形状は薄切りなのかブロックなのか、
油や水はどうするのか、ルーやスパイスはどんな物を選ぶのか。
正しくは「材料をリストにしたので用意しておいてください。」だ。
もちろん調理だけを教えるなら説明する側が用意してしまった方が良い。
料理と調理ではニュアンスが異なる。料理には材料の調達が入っているが調理は違う。
説明下手な人は直前になって「あー〇〇が無い。カレーを作るんだから〇〇が有って常識だろう。」等と訳の分からない叱責をする。
「じゃあ最初からそう言えよ…」と思われても仕方ないし、
「質問しなかった聞き役が悪い」と捉えるのも間違いだ。
相手は初心者なのだから勘が働かなくて当然。
これでは聞き役との信頼関係が最初から崩れてしまう。
(実際昨日、筆者と説明役の方との信頼関係は崩れた。)
2,流れの説明
これからカレーを作るにあたり、どのような事をするのかという大まかな説明を行う。
工程の整理だ。これは出来るだけ簡略にする。
洗う、切る、焼く、煮る、盛り付けるの5工程だ。
説明下手な人は何も言わず「じゃあとりあえずやってみて」と放り投げる。
説明は良いからとりあえずやらせろ!という聞き手も居るだろう。
そういうタイプは初めの説明を聞かないのでとりあえずやらせて失敗させるのは1つの手段かもしれない。
だが全員がそうとは限らない。
テレビの番組で街頭の人に突然料理をしてみてと伝え、
奇想天外な手順を踏んだ人を笑うコーナーが有る。
やらせかどうかはさておき、手順を説明されていないのだからとんでもない事から始めても何の不思議はない。
洗わずにいきなり切ろうとした聞き手を馬鹿にしてはならないし、
皮を剥かずに切ろうとした人にビックリしたならそれは説明者自身の失敗だ。
成功イメージと流れさえ理解出来れば「後にこれがあれから今これをやるのかな」という「今やっている事の意味」も何となく伝わる。
以上の事から前段階としてイメージと流れの説明は必要不可欠だ。
いきなり手順の説明に入ったり、とりあえずやらせてみた場合と比較しても結果的に説明役も聞き役も負担が少なくなる。
詳細手順と注意事項
3の詳細手順と4の注意事項はケースバイケースだ。
これは聞き手が多数いる場合は3を全部終えてから4に入る場合が良い。
1人か2人ならセットにして問題ない。
大事なのは5の「コツの共有」を1番最後にする事だ。
3よ4と5を一緒くたに説明してしまうと聞き手はコツしか覚えないかコツを全く覚えてないかのどちらかになってしまう。
筆者の思う上手な説明の説明は以上です。
とりあえず1と2さえ丁寧に行えば説明という難しい作業はスムーズにいくと思う。
聞く側も聞く側で難しい。
が、ちょっと長くなってしまったのでそれはまた別の機会に書く事にする。
大変しつこいが最も大事な事は「成功イメージの共有と流れの説明」です。
おしまい。
余談。
先日部下の1人に上手なパワーポイントの作り方を聞かれた。
「具体的にどんな事を教わりたい?」と聞いたところ「見やすいレイアウトとか小技です」と言ったので
一通り王道のレイアウトや小技を教えた。
資料作りも有る程度センスなので必ずしも彼が今後伸びるかは分からないが、
ここでもやはり最も重要なのは成功イメージの共有と大まかな流れだ。
上司や先輩に「資料を作って」と言われた場合、指示側には大まかなイメージが有る。
優秀な指示役ならそのイメージを共有しながら指示をするが、
優秀な人でない場合は「とりあえず作って」と言ってくる。
その場合は聞き役である自分が「こういうイメージで作ろうと思いますが宜しいでしょうか」と伺いを立てなくてはいけない。
ページ数はどれくらいをイメージしてるか、目次はイメージと合ってるか、最も強調したいところはどこかの3点だ。
確認に使う時間は1,2分で良い。
部下には一通り教えた後、いま教えたのは料理で言えば最後の隠し味程度のもので、
一番大事な基礎はクライアントがどんな資料を欲しがっているかを明確にする事ですと伝えた。
若い内は資料を作れと言われると「とんでもない資料を作ってビックリさせてやろう」と意気込むものだがそれは間違いだ。
たたき台(漫画やCMで言えばネーム)をまず作り、この感じて進めて良いか確認を取る。
それが正解への近道だと筆者は思う。