アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~ シーズン1の感想について書く。
面白いドラマなので観てない方は是非。
核心に触れないようにおススメするつもりです。
まず世界観。
今よりもう少し先の未来、といっても100年未満の未来と言った感じ。
そんな時代では人間の記憶を全てデジタル化する事に成功し、
死後の世界を仮想空間で過ごせるサービスが既に運営されている。
死ぬ直前であっても生きている状態であれば脳の情報をアップロードし、デジタルの世界で自我を持ったまま楽園生活を送れる。
アップロードされた人達とはビデオ通話はもちろんVRスーツを全身着こめばあんなことやこんなことまで出来てしまう。
(葬式では本人が登場してスピーチする。)
仮想空間の舞台は景色の良いホテルで、
人型AIのホテルマンが基本的な世話を何でもしてくれる。
もちろんAIだけでなく同じようにアップロードされた人達が大勢暮らしているので会話はもちろん住人同士であんなことやこんなことも可能だ。
暮らしはというと、生きている時と同じように空腹などのストレスを適度に感じるよう設計されている。
(前は無知覚だったらしいがそれだと病んでしまう人が多くアップデートされたそうだ。)
無限の寿命をノーリスクで堪能できるというCMが街のいたるところで流れている。
全てが思いのままかのように広告されている。だが問題も有る。
非常に素晴らしいこのサービス、残念ながら有料である。
未来の世界であろうと世の中なんでも金がかかる。
特にこのアップロードは一般的に富裕層が高額な月額費用を払って実現している。
生きているスタッフがVRとして仮想空間に入り
専用コンシェルジュとしてアップロードされた人達の望みを何でも叶えてくれる(金さえ払えば)。
基本プラン(ご飯とベッドメイクと無料の趣味嗜好)以外はチャリンチャリンと数ドル払って決済する。
風邪を引く、くしゃみするなんて現実世界の苦しみを味わう事も有料だが可能だ。
当然お金持ちは本当に何不自由なく暮らせるが、最下層の人達は酷い暮らしをする事になる。
1日に通信できる量(今風に言うギガ)が限定されているプランだと1日に動ける時間も限られ出来る事も大幅に少ない。
(それでも死人と会話が出来るんだから遺族としては貴重だろうけど。)
貧富の格差があの世にまで出てきてしまっているのはとてもリアルだ。
とても怖い話だが支払い能力が無くなると削除されてしまう。
一応仮想空間内であっても自殺は可能だし、支払っている側(生きている人)がもう不要と判断すれば削除になってしまう。
そんな世界で2人の主人公が暮らす様をドラマにしているのが本作。
1人はアップロードされた男性、もう1人はこのサービスを運用する会社に雇われているコンシェルジュの女性だ。
未来の世界が生み出す友情、恋愛、サスペンス模様が面白い。
おススメです。
最後に本作最大の魅力について。
この世界は上述の通り貧富の差など問題を抱えている。
アップロードが富裕層だけのものとしている現状に不満を唱え市民運動が起きていたり、
宗教的な観点からアップロードと天国は完全に別物と捉えている人との摩擦であったり、
アップロードされた人の人権が余りにも支払い側優先になっていたりする事だ。
少年の状態でアップロードされた子は見た目(アバター)を母親が変えてくれないので成人近いのに12歳のままだったりする。
(何故か精神も成長しないようだった。)
これらの問題点こそが本作の魅力だ。
本当にこういう世界になったらおそらく起きているだろう問題がいくつもあるだろうというSFの中でのリアリティ。
身も蓋も無い言い方だがこれだけ凄い技術が発展しているのに暮らしている人達は仮想も現実も全然幸せそうに見えない。
娯楽作品で笑えるシーンも多い本作だが考えさせられる点も多い。
シーズン2が楽しみだ。
おしまい。