落語のススメ(冬)
落語のススメについて書く。
12月と1月は特番の嵐だ。
お笑い番組も数多く放送され、録画に忙しい。
だが何故か、冬は特に落語が聴きたくなる。
通勤中、
しんみりした季節だからか
寒いと集中力が上がるからか
ラジオではなく落語を聴くことが多い。
もし落語に興味が有るけど何を聴けば良いか分からない、という方がこれを読んでいたら、下の太文字を基に元に何とかとして聴いてみて欲しい。
CDでもDVDでも良い。
ネットにもアップされているが著作権をクリアしているか不明なのでリンクは貼りません。アマプラにサブスクで入ると良いんだけどなあ。
おススメするのは2本。
古今亭志ん朝の「芝浜」という作品と、
立川談志の「芝浜」だ。
同じ話なのでとりあえずどちらか1本で良い。
落語はクラシックと同じで1つの話を色んな人がする。
どちらが良いかという論戦は無意味だ。
カレーライスとラーメンどちらが旨いかというようなもので、
今日どちらを聴きたいかというだけの話だ。
(2人とも故人だし名人だ。)
冬がテーマの落語は多い。
芝浜、御慶、二番煎じ、うどんや、しじみ売り、富久・・・など20個くらい有りそうだ。
年の瀬、正月を題材にした話は本当に多い。
みんな暮れと正月はお金に苦労したんだろう。(現代人もそうだが)
年末は各商店が「つけ」の回収にやってくる。
「つけ」自体は別に恥ずかしくない時代だが年末だけはそうはいかない。
全部払うのが無理でも、わずかばかりは誠意を見せないと今後商品を売ってくれなくなる。
そうなると生きていけない。
しかし金は無い。
手練手管で言い訳したり追い返し専用の人を雇ったり、
色々な事で何とかその年をやり過ごそうとする貧乏町人の馬鹿馬鹿しい話が非常に面白い。
その中でも芝浜は落語でも1,2を争う人気のお話。
笑いと人情が入り混じった非常によく出来たお話だ。
あらすじを4行で説明してみる。
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魚屋を営む主人公。腕は良かったが酒好きが講じて仕事をせず飲んでばかり。
ついに生活費が底を尽き奥さんに尻を叩かれ渋々魚市場に向かう。
到着したが朝早く出過ぎて市場はまだ開いてない、暇なので近くの浜で時間を潰していたところ大金が入った財布を拾う。
これでまたしばらく酒を飲んで生きていけると喜び家へ戻るが・・・
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こんな感じで始まる。
舞台となる芝浜は現在の港区の本芝公園。
落語は講談と違ってフィクションだし架空の人物を取り扱う事が多い。
だが舞台は日本橋や神田など実在する街なのでリアリティが有る。
想像してみて欲しい。
生活が苦しい中、仕事をせず酒浸りのパートナーが突然大金を拾って帰ってきたら貴方はどうするだろうか。
本人はこれで遊んで暮らせると喜んでいる。
ネコババ、警察に届ける、どちらにしても、
拾ってきたその「ぐうたらなパートナー」に何と声をかけるだろうか。
江戸時代は現代と違い共生の意識が強かった。
今のように隣人の顔も名前も知らないなんて事は無いし、
醤油や味噌を貸し借りしていた時代だ。(昭和中期まで有ったそうだが)
そんな緩い時代のお話。
年末は芝浜を是非聴いてみてください。
最後に。
芝浜の本編とは違うがこの話のまくら(本編に入る前の世間話)に談志が使っていた小話を一つ。
夫「おい。隣に米をわけてやれ。」
妻「なんだい藪から棒に。どうしたんだい。」
夫「帰る時に前を通ったら『みい坊』がよ。芋を飯(お米)替わり食ってやがんのよ。大人は我慢すりゃ良い。でも子供は可哀そうじゃねーか。ウチも余裕有るわけじゃねーけどよ。」
妻「あらそう…。そりゃあ可哀そうだね。うん、それじゃちょっと行ってくるよ。」
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妻「ただいま。行ってきたよ。」
夫「おう、どうだった。」
妻「泣かれちゃった。お前さんの言う通りだった。大人は我慢すりゃいいけどさ、子供はそうもいかないもんね。」
夫「そうかそうか、そりゃよかった。じゃあうちも飯にしよう。」
妻「無いよ。全部あげちゃったもん。」
夫「そうか、なら芋でも食おう。」
筆者はこの小話が大好きだ。
現代ではあまり見られない近所感、親密感、人情が有る気がしてならない。
だが現代はクラウドファンディングを始めとして、人情をシステムで繋ごうとしている。
それはそれで良い傾向だと思う。
おしまい。