56歳で5度目の海外チーム移籍。
このたった一行の偉業を今後越えられる選手が現れるだろうか。
集中力がモノをいう競技でなら有るかもしれない。
体力が最重要なサッカーでこんな事を成し得るのはカズしかいないだろう。
「不世出」という言葉は滅多に使われないがカズは相応しいと思う。
いや本当に信じられない。
監督やコーチとして呼ばれたわけではない。
昨年度に最年長得点記録を塗り替えている通り活躍してお声がかかった。
カズより上手で良い働きを選手はたくさん居る。56歳だし、当然だ。
呼ばれた直接の理由は分からない。
56歳がするプレーがどんなものかと興味をそそるタレントとして、
56歳が現役を続ける姿を若いチームメイトに見せて触発させる為として、
色々と想像を搔き立てられるが何にせよとんでもない偉業だ。
40歳を超えてメジャー第一線だったイチロー、
スキージャンプのレジェンド葛西、
みんな凄い。
どっちが凄いかなんて比べられないが、カズはその中でもとびきり凄い。
中学の3年間だけサッカーをやった。
しんどいスポーツだ。
全力で攻めたあと、ボールが奪われたら全力で戻らないといけない。
ボールを奪ったら全力で走ってチャンスを作らないといけない。
とにかく走って走って、走ってばかりのスポーツだ。
ボールに触っている時間より、走っている時間の方が圧倒的に長い。
彼のコメントが載っている記事も有る。
以下は抜粋
「また海外で、サッカーが文化として根付いている国でやれる喜びがある。当然、選手として成功したい思いもある。でも不安の方が大きいよ。
~中略~
ただポルトガルで選手として戦える、挑戦する機会を与えてもらえるなんてそうはない。今の瞬間しかない。そこに向かうエネルギーがあるのなら行くべきだと思った。これも1つの宿命なんだと」
なんて格好良いんだカズ。最高だ。
引退すればいくらでも、どんな役職でも持てる人が現役にこだわり、
雇ってもらえる体力と技術を維持し、
いま再び、大きな不安を伴って海外進出する。
こんな人は他に居ない。
カズが30代後半くらいの時か、
はっきりしないが「現役で居る限り代表から招集される可能性が有る」とコメントしていた。
申し訳ないが筆者を含めて日本国民全員「呼ばれる事は無いだろうけど、そう言って自分を鼓舞して高い意識で現役を続ける姿勢は尊敬するよカズ」としか思っていなかっただろう。
彼をそれを言い続けて、50歳を超えてもまだそれを言っているから
「ひょっとしたら本気でその可能性を信じているんじゃないか」と思えてしまう。
というか信じているんだろう。そうじゃないと56歳で海外挑戦なんて無理だ。
現役を続ける努力が超一流どころか世界ナンバーワンである事は間違いない。
そしてもう一つ。
1つのスポーツ、1つの仕事をこれだけ長い事、高いポテンシャルを持って続けられる事は驚異的な才能だ。
誰だって飽きる。
俺にはこれしかないから、という状況ではない。
引退すればいくらでも栄光ある地位に付ける人なのにそれを良しとしない姿勢は尊敬を越えてもはや何と表現して良いか分からない憧れを感じる。
ポルトガルに進出後も頑張って欲しい。
こんな格好いいおじさんに、自分もなりたい。
最後に素晴らしいインタビューをNHKがやっていたので載せておく。
いくらでも良い訳出来てしまう年齢なのに、シンプルな悔しさが原動力というのはカズが持っている1番素晴らしい才能かもしれない。
おしまい。