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※ネタバレ有り 「ある戦争」の感想

ある戦争 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

 

先週は「コリーニ事件」、「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」について書いた。

 

 

どちらも名作で、その流れでおススメに出てきた「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」も見てみた。

そこそこ面白かったけど「これだけの名優揃えてもこんな感じか」という感想(☆を付けるなら3)だったのでそちらは省く。

 

というわけでその次に見た「ある戦争」の感想を書く。

 

ある戦争

 

ストーリーとしてはとても簡単な物なのであらすじは3行で終わる。

 

国連軍としてアフガニスタンに派兵されているデンマーク兵団。
現場指揮官で有る主人公の部隊は時折タリバンがやってくる民間人居住地区の巡視。
部下からは「こんな任務意味有るのか」と不満をぶつけられる毎日。
ある日、民家近くで銃撃戦が始まり兵士の1人が重傷になる。
急ぎヘリコプターで移送しないと死ぬであろう状況だが敵は視認出来ない。
敵の存在を明確に出来ないまま空爆要請するが本部は確実に敵が居るエリアだと断定出来ないからと却下される。
指揮官である主人公は通信兵に「敵を見たと言え」と命じ、空爆が開始される。

安全地帯を確保出来た事で負傷した兵士は一命をとりとめ病院から無事を報せる。
喜んだのもつかの間、法務局が主人公を訪ねてくる。
主人公の要請した空爆で子供を含む民間人11人が亡くなってしまったので告訴されるという。
帰国し犠牲者の映像と当時の状況を振り返り判断に自信が無くなる主人公。
果たして判決の行方は・・・。

 

書いてみたら全く3行で終わらなかった。

これでもだいぶ端折ったのだが難しい、文才が乏しい。

 

ちなみに主人公の役者さんはピルウ・アスベック。

筆者が大好きなドラマ、ゲームオブスローンズで「ユーロン・グレイジョイ」を演じていた。

かなりファンキーな役柄だったのでこの映画の重圧的な雰囲気に慣れるまで少し時間がかかった。

 

 

映画の特徴として徹底的に音楽を排除している。

視聴中はそれに気が付かなかったがエンディング直前でたった1度だけ使用されるのでハッとした。

 

映画としてのテーマは難しい。

題材として充分に有り得そうなシチュエーションを作るから、みんなそれぞれが何か感じ取ってくれという解説が無い潔い作り。

 

コリーニ事件のように「貴方ならどう裁く」という風にも取れるし、

貴方が主人公と同じ立場ならどうしてたかと言う風にも取れる。

同じ立場というのは銃撃戦の最中もそうだし裁判中もそうだ。

罪を自覚し有罪を受け入れようとする主人公だが1人で3人を育てる妻から「お願い無罪を勝ち取って」と懇願される。

 

妻側の苦労もたっぷり描写されるので妻がどういう気持ちで懇願してるか見ている私達は理解出来ている。

 

そして当日の現場を見ている我々視聴者は敵の存在が確かに有った事を知っている。

空爆標的となった第6地区なのかは分からない、姿は見えないが実際に弾がガンガン飛んできていた。

喉を負傷しあの世に片足を突っ込んでいる部下を目の前にしながら取るべき行動は一体何が正解なのか。何が最善なのか。

 

主人公の判断は正解か最善か。

部下の命を救うという点に置いて最善だったように思える。

だが結果、(おそらく)何の罪もない民間人が死んだ。それも大勢。子供も居た。

 

1人の部下を救うか民間人の命を救うかという天秤は後になって分かったものだ。

当時その場にまだ民間人が居るとは思っていなかった。直前に行った家では子供を含めて家族全員殺されていた。

主人公達には分からなかった。

そもそも頭の上や体の横を弾がバシバシ飛んでいる状況でどれくらい把握出来るものなのだろうか。

続く銃声、反撃しようにも敵が何人でどこにいるかもわからない。

刻一刻と死に向かっている部下、攻撃は止まらない、全滅の可能性も充分有った。

どうすれば良かったのか。

 

帰国して裁判が始まる。

本作では検察の女性が少し嫌な奴風に描かれている。

主人公の言い分は「自分は見てないけど敵は居た。誰かが見たと言った。誰かは覚えてない。」という無理の有るもので、どの兵士も「俺が言ったんじゃない」と口を揃える。

緊迫した主人公とは裏腹に担当した裁判が優位に進む事で思わずニヤついてしまう。

深刻な裁判なのに遠慮がちながら「んなアホな」という吹き出しもしてしまう。

安全な場所で、正常な状態で、ゆっくりと検討出来る状況にあれば主人公も違う選択肢を取ったかもしれない。

検察側はそういった状況を鑑みず正論を口にし続ける。

(検察の役割としては正しいようにも思える。)

 

状況は全く異なるが「ハドソン川の奇跡」でも機体故障で川に着水した主人公が検察に何でそんな事したんだ空港に戻れば良かっただろう、と追及される。やはり安全な場所で、正常な状態で、ゆっくりと検討出来る状況ではなかったというリアルな状況が置き去りにされていた。

 

最善の方法と思われる行動を取った結果、子供が爆撃で死亡。

これは罪かどうか。

非常に重たい内容で、判決の結果がどうあれ主人公はこれからも苦悩し続けるであろう事が表情の描写からうかがえる。

 

感想

筆者は国際情勢に疎い。

人口約583万人という千葉県より少ない小国であるデンマークアフガニスタンへ派兵してるなんて知らなかった。

以前見た「ハイエナ・ロード」でもカナダが派兵してる事を知らなかった。世界的に見たら金や物資しか出さない日本の方が特異なのかもしれない。

 

正解と最善は違う。

何をどうすれば良かったのか。

あらすじからは省いたが冒頭で巡視任務中に若い兵士が地雷を踏んで死亡している。

そもそも部下たちも不満を持っていたあの任務は必要だったんだろうか。

そもそもデンマークアフガニスタンに派兵する必要は有るんだろうか。

そもそも国連軍の存在意義とは。

 

そういった事を考えさせる為、一石投じる目的で作られた映画なのかもしれない。

 

驚いたのはAmazonプライムのトップレビューの内容が「この映画はハッピーエンドで締めくくられているがそこに違和感を…」といったものだった事だ。

 

これでもかと主人公の苦悩を見せつけ、おそらく未来永劫自分を責め続けるであろう描写がラストシーンなのだけど…。

受け取り方は人それぞれだなと改めて思った。

 

 

ロシアによるウクライナ侵攻が1日でも早く終わる事を祈ります。

おしまい。